18世紀に生まれたチェスを指す人形「ターク」の数奇な運命に迫った一冊。
この人形はヨーロッパ、アメリカで大きな反響を呼び、様々な論争を巻き起こしました。
タークは驚くほどチェスが強く、時には声を発し、またある時には対戦相手を挑発さえしたといいます。
中に人が入っているのでは?と当時の科学者や知識人は疑いましたが、間近で観察しても謎は解けず。
結局そのメカニズムは引退するまでの85年間、誰にも見破られませんでした。
本書はそのチェスを指す人形タークの誕生から、活躍、反響、流転、解明、最期までを綿密に追っています。
タークは「機械は知能を持つのか?」という大きな疑問を人類に突き付け、多くの人々の想像力を刺激しました。
これはまさに史上初の人工知能論争といってもいいかもしれません。
今日のコンピュータに至る大きな議論に火を付けたのは、実は小さな一体の人形だったと思うと不思議な気がしますね。
また、タークはその生涯で多くの偉人と関わっています。
マリア・テレジア、ナポレオン・ボナパルト、ベンジャミン・フランクリン、チャールズ・バベッジ、エドガー・アラン・ポーなどなど錚々たる顔ぶれです。
彼らとのエピソードもふんだんに語られており、歴史ものとしても大変面白いです。
特にエドガー・アラン・ポーがタークのメカニズムを論理的に分析&推測した一件は、後に彼が生み出す世界初の推理小説へ繋がって行くと感じられ凄く興味深いです。
たった一体の人形が、世界の歴史に与えた影響とは?
果たしてタークの正体とは?
なぜその秘密は長らく誰にも分らなかったのか?
その答えは、本書の中にあります。
論理的な話が好きなプログラマーなら、推理しながら読むと楽しい一冊ですね。
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